エスティマはミニバン界の異端児?
3列シートのミニバンの特長とは何だろう。それはセダン車では求めることも出来ない室内空間の広さや3列シート多人数乗車といった「効率の高さ」だ。それゆえの背の高さであり、箱型のボディスタイルであったりする。
しかしミニバン界の人気者「エスティマ」は、必ずしもそちら方向の性能ばかりを追い求めているワケではない。むしろ「未来的な曲面スタイリング」に「適度なスペース」という、Lクラスミニバンとしては異端なコンセプトをウリとしているところがある。しかも直接対抗する同コンセプトのミニバンは今だ現れず、長いあいだ孤高の存在となっているのだ。
ただそのコンセプトが間違いではなかったことは、新型エスティマが先代モデル同様にバカ売れしている現状からも良〜く理解出来るだろう。いわば「ミニバンらしくない」ミニバン。その独自の立ち位置とは、一体何処にあるのだろうか。
新型エスティマの「立ち位置」とは
新型エスティマの3列目シートのスペースは、はっきり言ってさほど広くはない。椅子自体もやや小ぶりかつ薄い。もちろんオトナが2名乗車するにはまあ問題ない広さではあるけれど、新型になって随分と3列目シートを割り切って設計したように見受けられる。
しかしトヨタは、先代エスティマユーザーの多くがこの席を普段あまり使っていない現状をなにより良く知っているのだろう。そう、ユーザーにとってのエスティマは、『未来的なカッコイイスタイリングのスペースワゴン』。3列シートは「あれば便利」という付加価値の一つでしかないのだ。だからトヨタも、多人数乗車性能よりスペースを有効活用することのほうに注力を傾けている・・・そう考えれば、エスティマというクルマの立ち位置が良く見えてくるというワケだ。「3列目が狭い!」と声高に叫ぶのは的外れな論評なのかもしれない。
いっぽうで、3列目を常時使用するユーザー向けに箱型ボディでより車内の広いアルファードやノア・ヴォクシーをしっかり用意するぬかりのなさもサスガはトヨタだ・・・。
使い勝手が大幅に向上
新型エスティマの3列目シートには、座席を手軽にポンと折り畳みし、荷室を拡大出来る機能がついている。先代では座面先端を「く」の字状に跳ね上げ、さらに2列目までスライドさせて荷室スペースの拡大を図っていたけれど、左右別々にスライドすることは出来ないうえ、さほど広いスペースが生まれるワケでもなかった。
しかし新型は片側だけ畳んでスペースを生み出すことも可能。また先代同様に2列目は座面跳ね上げタイプのスライドシートだから、こちらを前席側にスライドすればかなりの広大なスペースが誕生する。8名乗りのタイプの場合6対4に、7名乗りタイプの場合は左右で個別にスライドさせることも出来るなど、実用性本意のアレンジも出来るのだ。
例えば、自転車通勤・通学の家族を駅まで迎えに行った時。ホームセンターで長尺の家具を衝動買いした時。日々の生活に「時々」発生する積載シーンは、先代モデルでは対応しづらかった。しかし新型エスティマなら、そんな要件もいともカンタンに対応出来る。「新しいエスティマにして良かったね」、そうユーザーが言っている声が聞こえてきそう・・・
さらにこの収納スペースはシートを収めない時には広大なフロアトランクとしても活用出来るから、例えばこの中に巨大なゴルフバッグを積むことだって可能。またフタを外せば縦にかさばるモノも積めるのだ。
ちなみに試乗車は手動収納だったが、グレードによっては電動格納のオプション設定もある。とはいえ手動でも十分に素早くアレンジ出来る(むしろ電動より早い)から、あえて必要な装備とは思えなかったが。
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サイド&ワイドビューモニターの使い勝手に?
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まずは、ボディ幅を1800mm以内に収めてきたことにホッとひと安心。やはりそれ以上大きいと駐車するスペースで苦労する。とはいえやはり「デカイ」。最近出来たような大型ショッピングセンターの駐車場では問題ないけれど、そうでないところもまだまだ多い。しかもフロントの見切りはスタイリッシュなボディゆえちょっとツライ。試乗車にはサイドモニターとフロントのワイドビューモニターがオプション装着されていたが、走り出すと自動的に消えてしまうのであまり有効ではない。例えば日産のサイドブラインドモニターなどは、走りながらでも使えるうえ左前の見え方もより分かりやすかったように記憶している。
2.4リッターだって十分イケる!
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残念ながら『エスティマユーザーの平均乗車人数』というデータは持ち合わせていないが、おそらく多くのユーザーは子供を含め2〜5名乗車というのが一般的だろう。しかし今回はあえて『ミニバンの効率性能』という点についてもチェックしてみた。
さて、興味の中心は果たして直4 2.4リッターのエンジンで7名乗車に耐えうるのかどうか。結論から言えば「コレで十分です」。本格的な山道は試す機会がなかったからその点は微妙ではあるけれど、追い越し加速の雰囲気からしてそこそこイケるフィーリングは感じられた。ただ3000回転以上回すと途端に騒々しくなるのは他のトヨタ車同様だ。でも重量の重いミニバンとCVTはマッチングが良いようで、7名乗車でも空いた高速道では流れに乗った走りが可能だった。多少の騒音を気にしなければ、遅いクルマをパスするために追い越し車線の流れに乗ることだって十分に出来る。
したがって、ここから導き出される仮定は、上級グレードに積まれるV6 3.5リッターのパワーでは、相当の自制心がないと危ないかも、ってこと。乗員の大事な命を預かっているのはドライバー。定員が増すごとにその責任は重くなる。速いからといって、くれぐれもムチャはしないよう。
乗り心地に感心、シートに?
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さて、感心したのは乗り心地だ。アエラスSは18インチを履くスポーティなグレード。乗り心地もハードなものと覚悟していたが、意外にも1〜3名乗車くらいでは極々安楽なモノ。この状態で気持ちよくコーナリングを愉しもうものなら、2列目席の乗員はいっぺんにクルマ酔いしてしまうことになる。むしろ7名乗車のほうがずっと車体が安定しており、もちろんアシが底付きするようなこともなく乗り心地も良くなっていたのだ。コレは同乗者も気付くくらい大きな変化だった。
ただしシートのサポート性はいまひとつ。先代アエラスSでは前席に専用のスポーツシートが装着されていたが、現行型では他モデルと共通のモノになっている。また後席も特に8人乗り仕様の場合、サポート性の低いシートとなり、これも乗員が体を安定させられない原因のひとつとなっている。シートアレンジ時のフルフラット性能に気をとられ、本来のサポート性が下がるようでは本末転倒。せめて2列目まではもうすこし良いシートをおごって欲しいものだ。
気になる燃費は!?
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今回、およそ150kmのコースを7名乗車と1名乗車のパターンでそれぞれ走ってみた。まず埼玉県の岩槻インターから東北道を下り佐野藤岡インターまで約45kmの道のり。3車線の真ん中を周囲の流れに乗って走り、時に追い越し車線に出て遅いクルマを追い越す、という感じだ。その後は栃木県、群馬県、埼玉県と国道をひた走り再び岩槻でゴールするコースだった。なおエアコンは前席オートで常時つけていた。同じクルマで別の日に計測したためコースの混み具合や気候が異なる(※1名乗車時のほうが気温も高く交通量も多かったためエアコンの作動率は高かった)から、あくまで参考値としてみて欲しい。
その結果は・・・
●7名乗車 リッターあたり約8.9km/l
●1名乗車 リッターあたり9.4km/l
ほぼ全コースが平坦な関東平野内を走るコースだったこともあり、思いのほか違いが出ないことにびっくり。ただしこれに山道の走りが加わればまた大きく違いが出たかもしれない。国土交通省審査値の10モード燃費では12.4km/lとなっているから、いずれにせよ十分に優秀な結果だった。また機会があれば試してみたいと思う。
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なぜ2.4にはVSCが付かない?
ここでちょっと気になることをひとつ。最近注目を集める「VSC」という装備をご存知だろうか。メーカーによってESC、ESP、VDCなどと呼ばれるが、要は『横滑り防止装置』と呼ばれる安全装備のことだ。滑りやすい路面やカーブなどで車体の横滑りを感知すると4輪各々のブレーキやステアリングを制御し事故の発生を未然に防ぐ「アクティブセーフティ」(予防安全)装備である。
最新鋭の新型エスティマにももちろんオプションで設定があるが、残念ながら3.5リッター車でしか選ぶことが出来ない。ミニバンは、セダン車やコンパクトカーに比べもともと車両の重量も重く、さらに多人数乗車となれば、万が一の時のダメージは非常に大きくなることが予想される。VSCでより多くの命が助かる可能性がさらに高まるのなら、ぜひ2.4への設定、いやVSCがABSやエアバッグのように標準装備となることを期待したい。
テスト車両 |
アエラスS 2.4(FF) |
|---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) |
4795x1800x1745mm |
車両重量[kg] |
1720kg |
総排気量[cc] |
2362cc |
最高出力[ps(kw)/rpm] |
170ps(125kw)/6000rpm |
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] |
22.8kg-m(224N・m)/4000rpm |
ミッション |
Super CVT-i(自動無段変速機) |
10・15モード燃焼[km/l] |
12.4km/l |
定員[人] |
8名 |
税込価格[万円] |
302.4万円 |
発売日 |
2006年1月16日 |
レポート/写真 |
徳田 透(CORISM編集部) |
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