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【トヨタ クラウン試乗記】想像を超えた乗り心地。日本の伝統はクラウンが作る!!

(2008.04.04)
【トヨタ クラウン試乗記】トヨタ クラウン ロイヤル エクステリア フロント

達人「大岡 智彦」が斬る!

トヨタ クラウン評価

大岡 智彦

職業:コリズム編集長
自動車雑誌の編集長を経験後、なぜかウェブの世界へ。アンチ、ミニバン派で死ぬまで絶対にミニバンは買わないと決めたものの、2人目の子供が登場して「家族思いのパパ」(偽りの姿)を演じてみたいとも考えているオヤジ。おもしろいコンテンツを制作していきますので、よ...

グローバル化の名の下に・・・。

 少し前のクルマには、ナショナリズムがあった。フランス車といえばフカフカのシート。ドイツ車はカチッとした乗り味など、生まれた国の個性を少なからず感じたものだ。ところが、グローバル化という流れの中で、多くのクルマが変わった。というよりも、同じようなクルマになってきたように感じるのは気のせいだろうか? 同じクルマを全世界で売らなくてはいけないというグローバルな視点で考えると、みな同じ方向に向くのは仕方ないことかもしれない。
 そんな思いもあり、初めてクラウンと対面する。クルマを数分見回した後「しまった。オレとしたことが・・・」と思ってしまった。ちょっとだけ「カッコいいなぁ」と思ってしまったからだ。こんな内輪ネタもどうかと思うが、クラウンは業界人にとって敵なのである。別にクラウンが悪いワケではない。具体的には高速道路を走るクラウンの覆面パトカーのことだ。業界人の多くは、高速道路を走るときには常にクラウン、とくにゼロ・クラウンの発見に注意を払っている。ゼロ・クラウンを見つけたら、ゆっくりと接近。覆面パトカーでないことを十分に確認してから加速というのが普段の走り方。とくに、後方から近づいてくるゼロ・クラウンを発見した場合は、即座に走行車線に戻りスローダウンが鉄則。そんなワケで、クラウンを見ると反射的にファイティングポーズを取ってしまうのだ。きっと、コリズムを訪れてくれている多くの人も、この気持ちは分かってもらえるはずだと勝手に思っている。

卓越した乗り心地のクラウン ロイヤル

 話は大きくそれてしまった・・・。クラウンは、セダンというジャンルにおいてほぼほぼ国内専用車という今時珍しいクルマなのである。そういう意味では、日本らしさの象徴とも言えるクルマかもしれない。日本専用車となると、ついつい甘えが出てきてグローバル基準に遅れることもあった。しかし、ゼロ・クラウンは自らを律し、世界の競合にも十分に対抗できる基本性能を身に着けた。とくに、アスリートシリーズは、そのスポーティな走りから今までにない若い顧客層を獲得した。ただ、得るものがあれば失うものもあった。日本らしさ、もしくはクラウンらしさという伝統だった。もっと具体的にいうと、チーフエンジニアの寺師さんは「とくにロイヤルの乗り心地」だったという。そのため、今回のフルモデルチェンジでは世界基準のパフォーマンスをキープしつつもクラウンの伝統でもある「乗り心地重視」に力を注いだという。
 その乗り心地の違いは、数百メートル走ったぐらいでも十分に違いが分かるほど良く分かる。サスペンションの動きにフリクションがないというか、雑味がないというか、とにかくスッキリとした味わいなのだ。とくに、ロイヤルの乗り心地がよい。もはや、タイヤのゴツゴツ感もほとんど感じ取れないほど。修復を繰り返しツギハギだらけの一般道が、まるでサーキットの路面のような凸凹がほとんどない路面に感じるほどだ。

【トヨタ クラウン試乗記】トヨタ クラウン ロイヤル エクステリア フロント
クラウン ロイヤル
【トヨタ クラウン試乗記】トヨタ クラウン ロイヤル エクステリア フロント
【トヨタ クラウン試乗記】トヨタ クラウン ロイヤル エクステリア リヤ
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運転がヘタでも上手くなった気がするAVS

 サスペンションは一般的に、乗り心地重視にすると操縦安定性が下がるという傾向がある。ところが、意外にもこのロイヤルの足はそこそこのスピード域でも元気に走る。もちろん、しっかりとした操舵感とかクイックなハンドリングという意味ではなく、それなりにスイスイという意味だ。このフットワークを支えるのは、AVSと呼ばれるサスペンションの減衰力制御システムの恩恵。今までのものより、よりロール姿勢制御を進化させた。過多なロールやピッチングは徹底的に制御され、乗り心地を確保しながらもスムースな走りを実現したのだ。さらに、この制御に驚いたのはアクセルのオン・オフやブレーキング時のピッチングもほとんど感じさせない。そのため、運転が上手くなったような錯覚を起こすほどだ。「クラウンのお客様の中には、運転が下手なのに自分は上手いと思っている人がたくさんいる」という開発関係者。このAVSなら、そんな人たちに「運転しにくくなった」とは言われないだろう。

アスリートと呼ぶには手応えが足りないが、高速安定性はピカイチ

 アスリートも格段に乗り心地が向上した。ロイヤルに比べればよりスポーティ。それでも、ゼロ・クラウンのロイヤルよりも乗り心地は良いと感じるほど。ハイスピードのコーナーリング時でも、ロールスピードのコントロールが上手く、ロールはするけど不安は感じない。ただ、アスリートと呼ぶほどスポーツ系ではない。ステアリングセンター付近のステアリング操作に関しては、まったくのダル系。俊敏な反応は示さない。これはロイヤルと共通。俊敏性の必要のないロイヤルは、それで十分。だが、スポーツをウリにするアスリートにこれでは物足りない。そのためか、アスリートの一部グレードにはVGRSと呼ばれる可変ギヤ比をもつステアリングを装備する。ロックtoロックが通常3.2回転に対して最大2.7回転になる。これもまた微妙で、ワインディングロードを走っていても、VGRSのメリットをあまり感じない。なんだか、ダルなハンドリングをVGRSで少しスポーティな雰囲気にしてみました的だった。フットワークには磨きがかかったが、ハンドリングに関してはまだまだ磨きこむ余地があるだろう。そういう意味では、アスリートとロイヤルの差をもっとハッキリとつけても良かったのかもしれない。その代わりといってはなんだが、直進安定性はダルなハンドリングが逆に好印象になる。過敏に反応しないから、とにかく高速道路での移動は楽チン。パワーも十分なので、かなり高い速度で長時間移動しても疲れない。
エンジンはアスリートが3.5リッターと2.5リッター、ロイヤルが3リッターと2.5リッターが用意されている。どのエンジンを選んでも十分なパワー&トルクを発揮する。どちらのシリーズも静粛性やフラットライドな乗り心地のためか、本当にスピード感のないクルマだ。気が付くとかなりのスピード域に達しているので、スピードメーターをたまに確認しないと同じクルマの覆面パトカーに御用! なんてことも十分にありえる。とくに、3.5リッターを積み315馬力&38.4kg-mをアウトプットするアスリートは、とにかく激速であるからアクセルの踏み過ぎに注意だ。

【トヨタ クラウン試乗記】トヨタ クラウン アスリート エクステリア フロント
クラウン アスリート
【トヨタ クラウン試乗記】トヨタ クラウン アスリート エクステリア リヤ
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トヨタ流安全装備ヒエラルキーからの脱出し、平等な安全性能を手に入れた!

 安全性能も高いレベルになる。全部で10個のエアバッグが全グレードに標準装備されている。横滑り防止装置はVDIMと呼ばれるクルマの限界前から総合制御するより、高い安全性能をもつタイプが全グレードに標準装備された。今までこういった安全装備は、高級グレードや大きい排気量をもつグレードには標準装備、安価なグレードや小さい排気量のグレードにはオプションもしくは装着不可という差別化が行われていた。たくさんお金を出してくれた人は、より安全なクルマを買えますよ、的なもの。しかし、我々が安価なグレードを買おうが、高価なグレードを買おうが、それはユーザーの考え方なのに、高価なグレードを買う人を頂点にした安全装備のヒエラルキーをメーカー側の都合で作っていたのだ。こういった考え方を払拭し、日本のヒエラルキーの象徴ともいえるクラウンが、クラウンを買うすべてのお客様には同じ安全性能をもたせたというのは十分に大きな進化といえる。この考え方は、すべてのトヨタ車に適用して欲しいと思える。
 乗り心地がよい=クラウン、それはクラウンの伝統でもある。得るものがあれば失うものもある。ゼロ・クラウンはまさにそんな流れの中にいた。その反省もあったはずだ。新型クラウンは、自らの強みを自問自答。その答えは、日本専用車としての「クラウンらしさ」。それは、昔に戻るという消極的なものではなく、らしさの本質に気付き磨き上げること。そして、世界基準のパフォーマンスに日本らしさの背骨を通して生まれ変わった。クラウンは日本の演歌だと良く例えられる。きっと、新型クラウンは日本人の心にしみじみと響きわたることになるだろう。

【トヨタ クラウン試乗記】トヨタ クラウン アスリート

達人プロフィール: 大岡 智彦
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